花火に映る

遠くから既に耳に届き辺りに響き渡っていた、規則正しい爆発音の正体は木の葉の里を見下ろす山の上に辿り着いた時にようやく目にすることが出来た。
里の上に大輪の光の花が輝くのが見え、しばし遅れて轟音が届く。その頃にはもう花びらは流れて消えている。
上空で開く度に、それらは顔岩を照らし陰影をくっきりと浮かび上がらせていた。
カカシとヤマトの二人は足を止め、その光をしばし眺めた。
走りづめだったがここまで来ればもう敵に襲われる心配も少ない。
今この時期にこの二人で組んで偵察に出されるとは木の葉の人材不足の深刻さがうかがえるが、確かにカカシとヤマトでなければ乗り切れない任務だった。
「やってるねえ」
カカシが感心した様に言うと、数歩後ろにいたヤマトが興味のない声音で応じた。
「今日だったんですね、花火大会」
「間に合ったみたいね」
「まさか楽しみにしてたんですか」
ヤマトが溜息をつく。
「のんきですねえ」
つい先程まで血なまぐさい戦場を駆け抜けていた二人には、目の前の景色はまるで別世界の出来事のようだ。
「そういうわけじゃないけどさ」
カカシは肩越しにヤマトを振り返った。
「花火が上げられるってことは平和ってことだよ」
「…ボクはあんまり好きじゃないですけどね、花火って」
ヤマトが肩をすくめる。
「結局は火薬でしょ、爆薬の音を思い出すんですよ」
「音は同じでも違うものでしょ。綺麗じゃない」
「見える場所にいれば、でしょう」
冷たく言い放ち、あきれたように続ける。
「あいかわらず前向きですねえ、カカシ先輩は」
「何よ、じゃあヤマトは去年の花火大会も見てないわけ?」
口の悪い後輩の態度に拗ねた先輩が意地悪く尋ねる。
「去年の花火ですか?見ましたよ、任務から帰る途中に」
あっさりと答え、ヤマトはふと遠くを見る。
「木の葉は平和だな、と思いました。それからまだ木の葉はあるんだって」
ヤマトの言葉に、ん?とカカシが首を傾げる。
「花火が上がってるってことは帰る場所がまだ存在してるってことですから」
その説明にカカシが納得のいかない顔で呟いた。
「…なのに花火嫌いなの、お前」
「好きじゃない、って言っただけです」
背後で連続で鳴り響いていた音が止まり、暗くなる。二人が里の方を振り返るとその瞬間、ひときわ大輪の光が目の前で開いた。
「たーまやー」
その光に向かってカカシが大声を上げる。その様子にヤマトはぽかんと口を開けた。
「…恥ずかしい人ですね、まったく」
「気持ちいいよ、誰も聞いてないって」
「そういう問題じゃありません」
信じられない、と溜息をつきながらもヤマトは微かに笑っている。
「まあ先輩のそういうところ嫌いじゃないですけどね」
カカシが片方だけ覗いている瞳を大きくした。
「!?え、今なんてったの」
「なんでもないです」
きっぱり言い切って、カカシを追い越し歩き出す。
「もう行きませんか。今なら花火を目印に出来ますよ」
再びカカシが目を丸くし、くすりと笑う。
「お前も結構恥ずかしい台詞言うのね」
はあ!?とヤマトがすごい勢いで振り返った。
「そういうつもりで言ったんじゃないですから!」
「ハイハイ」
「そのにやけた顔やめてくれませんか」
「ハイハイ」
「ハイハイ言わない!」
「ハイハイ」





だいたい今週末辺りにやってた近所の花火大会が今年は10月になった…

11.08.10UP



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