蜘蛛の巣の迷宮
2α.
全てを剥ぎ取られた少年の身体は青ざめ、総毛立っていた。
恐怖の為か寒さの為か、ただでさえ白い皮膚は薄闇の中にほとんど溶け込んでしまいそうだ。
巻かれた包帯の不透明な白さと方々に残る赤黒い傷跡が奇妙に浮かび上がる。
夕羅にそれを鑑賞する趣味はないらしく、ただ少年の体を愛撫し続けていた。感情のない行為が少年の精神を引き裂いていく。
震えながらも時々思い出したように少年は手足を振り回し抵抗を見せる。その都度振り払っていた夕羅だったが、何度目かの抵抗でついに面倒になったのか五右ェ門の頬を殴りつけた。
「…うるさい」
冷たく吐いた言葉を耳にした少年の瞳に諦めの色が浮かぶ。
抵抗を止めた体を見下ろし夕羅は下半身に手を伸ばした。力なく横たわった穂先を口に含む。
五右ェ門の全身が引き攣る。
「ぁふッ…いや…助…けて…」
か細い声で少年は天井に向かって訴えた。その声とは対照的に、夕羅の舌の動きに口の中のモノはたちまち熱を持って膨れ上がっていく。
こういった刺激に免疫がないのがよくわかる。夕羅は隅々まで舌を巡らせた。どこを煽っても反応を見せる。
五右ェ門は自身の変化に怯え、襲ってくる快楽にひきつった吐息を漏らし続けていた。
あと少し。
そう見極め、夕羅が口を離し指で根元から軽く扱くとあっけなく達した。
がくがくと震えて達した身体が、自身の漏らした体液を受けその感触にまたびくりと強張る。
何が起こったかわからないような表情で、五右ェ門は呆然と横たわっていた。
零れた五右ェ門の液体を夕羅はすくって背後に塗りこめた。弛緩した五右ェ門の身体はされるがままだ。指で解すが、湿りの足りない蕾はまだ固く僅かな進入すら拒む。
「この程度か…」
夕羅が舌打ちする。起き上がると五右ェ門の髪を掴んで引き上げた。
自分の牡に押し付ける。既に充分勃ち上がったそれを目にして五右ェ門の顔が引きつった。
「咥えてみせろ、さっき私がやったようにな」
逃れようと抵抗する五右ェ門に苛立って夕羅は更にぐいっと髪を引っ張った。
「早くしろ。お前だって痛いのは嫌だろうが」
観念したように五右ェ門は舌を伸ばしてそっと舐めた。夕羅の手が五右ェ門の頭を押さえ込み、五右ェ門の口に自分の熱を捻じ込んだ。
「――ッ!?」
吐き出しそうになるのをそのまま押さえつけて頭を揺する。
「…歯は立てるなよ」
苦しさに涙を浮かべ咳き込みながらも、五右ェ門は必死で夕羅を咥え中で舌を這わした。 小さな唇の端から唾液が流れる。
夕羅の与えたものとは程遠い、そのめちゃくちゃな舌の動きに夕羅は苦笑いを浮かべ見下ろした。
五右ェ門の稚拙な刺激は夕羅を満足させるのに十分ではなく、
「手間のかかる…」
吐き出すように言うと夕羅は自分の指で自身を扱いた。
達する瞬間、五右ェ門の髪を掴んで引き上げる。
口を離れた先から飛び散った液体が五右ェ門の顔を汚した。濡れた髪に、白い身体に、染みを作る。半ば開いたその唇にも白いものが垂れた。
夕羅の体液を受け、呆然としたままの五右ェ門の身体を夕羅は再び押し倒した。足を抱え上げ、大部分を受け止めていた手のひらから五右ェ門の中へと注ぐ。強引に指でこじ開けられた蕾へと流れ込む感覚に五右ェ門は震え、夕羅から逃れようと身をよじった。今までにない抵抗を見せる。
「…変な、もの…入れるなぁ…ッ!」
「ああ?てめえで出したモノと同じだろうが」
蹴りつけようとする足を押さえ込み、夕羅の指は滑りを増した内部を奥へと進む。それでもまだきつく拒もうとする内壁を掻き回した。
五右ェ門の身体がしなる。
「なんなら最後に全部掻き出してやるぞ?」
にやり、と夕羅が笑う。
少年の顔から表情が消える。最後の砦さえ突破され、もはや何をしても無駄と悟ったように。
夕羅は指を抜くことなく更に奥へ進み緩く強く内側を探り続けた。半ば強引に指を増やし入口を広げていく。
「痛…やだ…も…、や…」
泣き声を上げ少年の指が布地を握り締める。抵抗を諦めても、身体が拒絶するのはどうしようもない。指の腹で擦り上げられる度震えが走る。
やがて苦痛の叫びが徐々に甘く掠れてきて、夕羅は僅かに口の端で笑うと指を抜いた。
中から指を引き抜くと、強張っていた五右ェ門の全身が安堵したように少し緩んだ。
間を置かず、そこへ既に昂ぶりを取り戻していた自身の塊を突き上げた。五右ェ門が抵抗をする余裕も与えず一気に貫く。
「ああぁぁぁぁあーーーッ!!!」
衝いて出た悲鳴は、最後には声にならず五右ェ門は虚しく唇を動かした。全身に衝撃が走り、手足が冷たくなっていく。夕羅が捻じ込んだ部分だけが痛みに熱く脈を打つ。
貫いたものの、初めてのものを受け入れた五右ェ門の内側は固く閉ざされ夕羅を拒む。まともに動かすことも出来ない。
「ちぃっ…どうせならもう少し坊主どもに手なずけられてから手に入れたかったものだな」
うんざりした口調で夕羅は吐き捨てた。
全身と同様、ぐったりと力を失った五右ェ門自身に手をのばす。
痛みに半ば気を失いかけた五右ェ門は弱々しく息を吐き、夕羅にされるがままだった。扱き上げるがまったく反応を示さない。
「しっかりしろ…少しは楽しませてもらわんと困る」
ぺちぺちと五右ェ門の白い頬を叩く。これでも手加減しているつもりだったが青ざめた皮膚には赤く跡がついた。
五右ェ門の瞳が虚ろなまま夕羅を見返す。唇が微かに動いて意味のない言葉を漏らした。
「面倒な奴…」
繋がった姿勢のまま震える全身に唇を這わせた。冷え切った皮膚の上を進む。汗に冷たくなった首筋に触れた時、まだ子供らしさの残る柔らかい髪が鼻をくすぐり夕羅は唇を歪めた。愛撫を止め、強引に最奥まで捻じ込み少年の腰を揺する。
「…あ…あ…あぁ…」
力の入らない体は夕羅の動きに人形の様に翻弄され、声を上げる。それに構わず夕羅は自身の高みに向かって腰を動かした。
「まあ上の口よりはマシか…」
そう呟きながら更に勢いを増す。五右ェ門の口から途切れ途切れに悲鳴が上がる。それでも少しずつ良くなってきたようで苦痛に顔を歪めながらも、身体の中心は夕羅の行為に勃ち上がってきた。
夕羅が押し込む度、五右ェ門は無意識に入口を締め付けてくる。狭い内部の絡み付きと相まって徐々に夕羅にも限界が迫っていた。
「くッ…」
もはや五右ェ門の反応に構う余裕をなくし、夕羅はおのれを叩き込んだ。悲鳴が一段と高くなり白いものが飛び散る。その声を聞きながら夕羅も五右ェ門の中に吐き出していた。
青褪めた皮膚に、粘りつく白い液体と乾いた血をこびり付かせて五右ェ門は死んだように眠り込んでいた。その身体が時折びくり、と震える。
その様を眉をしかめて夕羅は見ていた。
疲れる行為だ。
「女の方がまだマシだな…」
そう呟き苦笑する。
「しかし、役に立ってもらわねば…その間少しは楽しませてもらわんとな」
天井を見上げ、夕羅は息を吐いた。
「でないと…つまらん…」
夕羅様の冷たさが少しは表現できたかどうか…
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